今年は梅雨入りも早く、時に大雨にも見舞われてしまいますので、出かけるときはいつも傘を手放せない日々を過ごしております。
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今回知って得しま専科!は、代表的な節税である短期前払費用について「短期前払費用と2年分の経費」を解説いたします。
初回は2年分を経費計上できることがありますのでよくご理解ください。
また、「5分で学べる税務知識」では、「国税庁 「税務行政の将来像2023」を公表」について解説します。
今後のデジタル化が一層促進されます。
「コーヒブレイク」では、「退職金の税金が変わる?」と題して、政府がことしの「骨太の方針」で、退職金にかかる所得税の見直しを盛り込みました。
政府のねらいなど問題を提起しています。
今後もお役に立てそうなコラムをお届けしてまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
頑張ろうぜぃ〜(税) ♪
知って得しま専科! 「短期前払費用と2年分の経費」
代表的な節税である短期前払費用については、様々な質問が寄せられていますが、代表的な疑義の一つに、2年分支払うことの是非が挙げられます。
具体的には、引き落としが翌年度になったり、支払いを忘れたりした場合、翌年においては翌年分を発生主義により、翌々年分を現金主義で短期前払費用とすることになる訳ですが、そうなると2年分計上されることになります。
こうなると、過大な損金になりますから問題ないか、よく質問を受けます。
まず、規定を確認しますが、以下の通り継続要件が設けられており、これを見ると継続してやっていない場合に2年分計上するのはNGであるように解釈できます。
★法人税基本通達2―2―14(短期の前払費用)
前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。
以下2―2―14において同じ。)の額は当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払つた額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。
(注)例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。
実際のところ、継続する前(初回)のタイミングであれば、以下の通り2年分計上しても問題ないとされています。
個別事例 【問】 3月決算法人が、月掛けの定期保険料を平成23年3月に年払いに切替えた。
そこで年払いの定期保険料の支払いについて、基通2―2―14の取扱いを適用して、一時に損金に計上したい。
そうすると、同じ事業年度において保険料の2年分(月払いの12カ月分と年払い1年分)が損金となるが、問題はないか。
【答】 短期前払費用について、はじめて基通2―2―14の適用を受ける場合には、質問のようなことも生じるが、基通2―2―14への適用に当つての一過性の問題であり、その後、その経理を継続適用することで認容される問題と考えられるので、質問のとおり処理して差し支えない。
【継続性の意義】
ここで、今一度、先ほどの短期前払費用の通達をみてみましょう。
この通達には、「……継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、……」と表現されています。
この「継続して」は、「支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているとき」を修飾しています。
つまり、継続して支払時の損金とすることを意味しているのです。
これは、とにかく支払った事業年度に損金経理しているかどうかが問題になるということなのです。
前払いそのものの継続を要件としているのではないのです。
5分で学べる税務知識 ・・・ 「国税庁 「税務行政の将来像2023」を公表
★給与情報の自動入力が令和6年2月以降可能に
国税庁は6月23日、「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-」(以下、将来像2023)を公表した。
税務行政のDXをさらに進めるため、令和3年6月公表の「税務行政の将来像2.0」を改定し、新たに「事業者のデジタル化促進」にも取り組むとしている。
★確定申告の自動入力 給与所得の源泉徴収票は初
「将来像2023」は、従来からの①「納税者の利便性の向上」及び②「課税・徴収の効率化・高度化等」に加え、③「事業者のデジタル化促進」に取り組む3本柱とする(【参考】)。
上記①では「書かない確定申告」の実現に向け、自動入力項目の拡大等といった申告や申請等手続の簡便化、検索や相談についてデジタルを活用した高度化等に取り組む。
確定申告において必要なデータを自動で取り込み、数回のクリック等で申告できる仕組みを実現するため、令和6年2月から自動入力の対象に給与所得の源泉徴収票が加わる。
出力した書面ではなく、e-Taxで提出した給与所得の源泉徴収票の電子データが対象で、令和9年2月以降はeLTAXで提出した給与支払報告書も自動入力の対象となる予定だ。
納税者自身の基本情報の確認や一定の申請を簡易に行えるe-Taxのマイページについて、令和5年9月から法人向けにも利用対象を拡大する。
今後は、表示する情報や税務代理人への利用の拡大など、機能の充実を目指すという。
★オンライン照会 証券会社等にも利用を勧奨
上記②では税務当局の業務におけるデータ活用を徹底するため、地方公共団体や金融機関などの関係機関への照会等のデジタル化を進める。
税務調査等に際して金融機関等に行う預貯金等情報の照会について、オンライン照会未対応の金融機関等に利用勧奨を実施し、証券会社や生命保険会社等に対してもその枠組みを広げていくという。
上記③では事業者のデジタル化を促すため、他省庁と連携・協力してデジタルインボイスの普及等を目指すほか、デジタル化共同宣言やキャッシュレス納付推進宣言など、関係団体等との連携・協力による事業者のデジタル化における機運の醸成等といった施策に取り組む。
【参考】「将来像2023」における改定のポイント
① 納税者の利便性の向上
→給与情報等の自動入力を実現するため、令和6年2月から給与所得の源泉徴収票、令和9年2月から給与支払報告書がそれぞれ自動入力可能に。
② 課税・徴収事務の効率化・高度化等
→データ活用を前提とした事務の効率化・高度化のほか、関係機関への照会等のデジタル化等を推進。
③ 事業者のデジタル化促進
→関係省庁・団体等と連携・協力し、事業者のデジタル化の機運を醸成する施策等に取り組む。
コーヒブレイク ・・・ 「退職金の税金が変わる?」
20年だったら控除額は800万円にとどまります。
【問】どうして、そんな政府はことしの「骨太の方針」で、退職金にかかる所得税の見直しを盛り込みました。
政府のねらいは?
そもそも退職金にかかる税金の仕組みはどうなっているの?
教えて!
★退職金への課税見直しが打ち出されたのはなぜ?
労働市場改革の一環です。
今年の「骨太の方針」や、「新しい資本主義」の実行計画では、構造的な賃上げの実現に向けて成長産業への労働移動を円滑化させる必要があるとして、労働市場改革を推進する方針が盛り込まれました。
ところが、退職金にかかる税金は同じ企業で長く働けば働くほど、税負担が軽くなる仕組みになっています。
それが、転職への意欲を阻害しているという指摘が出ているんです。
【問】長く働くと、どれくらい税負担が軽くなるの?
【答】退職金を「年金」として分割で受け取るケースと、「一時金」として一括で受け取るケースでは税負担は違います。
一時金として受け取る場合、勤続年数がポイントとなります。
課税対象となる退職金の額を計算する際に、勤続年数が20年までは、1年あたり40万円が受け取る退職金から控除されます。
それが、勤続年数が20年を超えた分については、控除額は1年あたり70万円に引き上げられます。
例えば、勤続年数が30年だと、仮に2000万円の退職金を受け取ったとしても、そのうち、1500万円が課税対象から控除されます。
これが、仮に勤続仕組みになっているの?
【答】背景にあるのが日本の雇用形態です。
戦後の日本は、終身雇用を前提とした働き方が広がり、多くの企業や官公庁では、長く働けば働くほど、退職金の支給額が増える仕組みが定着しました。
こうした実態を踏まえて、退職金で一時的に収入が増えても、税負担が急激には増えない仕組みとなっているんです。
【問】見直しに向けてどんな議論になりそう?
【答】実は、税の有識者などでつくる「政府税制調査会」でも退職金への課税は長年、テーマとなってきました。
ただ、政府税制調査会の中里実会長は今月の会見で「多方面に目を配る必要があり、そう簡単に結論が出るとは思えない」として、丁寧な議論が必要だという認識を示しています。
勤続年数による差を解消するため、20年を超える分の控除額を引き下げた場合、退職金を住宅ローンの返済や老後の生活資金にあてようとしている人に対する影響は、小さくありません。
「新しい資本主義」の実行計画でも、「制度変更に伴う影響に留意しつつ税制の見直しを行う」とされています。
多くの働く人の手取り収入に関わる話だけに、慎重な議論が求められます。
事務所からのお知らせ
岩手県平泉町の中尊寺(世界文化遺産)
原宿の東郷神社 夏越の祓
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