いつも事務所ニュースをお読みいただきありがとうございます。
今年は、熊本地震や千葉豪雨など災害が多く発生しました。
被災されました皆様には心よりお見舞いを申し上げます。
さて、今月号の「知って得しま専科」は、8月号でご紹介した「非上場株式(取引相場のない株式評価)」 の動向を再度解説いたします。
「非上場株式の評価ルールの見直し」が行われますと多くの中小企業の株式評価が高くなり相続税等」の税負担が多くなるものと考えられます。
また、「5分で学べる税務知識」では地震保険のよくある誤解ポイント」についてご説明します。
そして「コーヒーブレイク」では、「人生100年時代の「年金繰下げ」でこんなはずじゃなかった!注意」と題して年金繰り下げの場合の注意をご説明します。
いずれも私たちの生活に影響を与える重要な内容ですので、ぜひご一読ください。
まだ残暑が続きますので、お身体には十分お気をつけてお過ごしください。
頑張ろうぜぃ~(税)

 

知って得しま専科!「どう変わる? 非上場株式評価の行方」

 

先月号の反響が大きかったので、今月も引き続き「非上場株式(取引相場のない株式評価)」 の動向を採り上げました。
中小企業の皆さんには自社株の評価が高くなり、その結果、相続税等の税負担が多くなることが予測されます。
202411月に会計検査院から「令和5年度決算検査報告が内閣に送付され、この中での主な指摘事項は次の通りでした。
1類似業種比準価額は純資産価額と比べて相当程度低い水準である
2評価会社の規模区分が大きくなるほど類似業種比準価額の適用割合(Lの割合)が高くなり、株式評価額が相対的に低く算定される
3配当還元方式の還元率10%)は近年の金利水準と比べて相対的に高い率で、それに基づいて算定される評価額は相対的に低くなっている
この検査院報告を受けて、国税庁は、今年420日に「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(以下「有識者会議」という)」を立ち上げ、以後現在まで第5回開催されております。

. 有識者会議立上げの趣旨
有識者会議立上げの趣旨は「検査院の指摘を踏まえ、取引相場のない株式の相続税評価について、相続税法の時価主義の下、適正な評価制度の在り方を検討する」としている。
評価見直しの方向性について、国税庁は次の4つを基本的な観点として、評価方法について幅広く検討を行うことを提案しました。

1)評価のの解消
 異なる規模区分の会社間の株式評価の公平性確保、評価方式間のかい離排除
2)評価額の「恣意性・操作性」の排除
 株式圧縮スキームの排除、特例的評価の趣旨を踏まえた配当還元方式の見直し
3)実務・学術上の進展を踏まえた「今日的観点」からの見直し
 適正な還元率の見直し、企業の収益力等を反映した評価方法の採用、学術研究の進展や税務以外の企業評価の手法等も参考
4)第三者への事業承継等の動向も踏まえた評価
 MAによる企業価値評価を踏まえた検討、純資産価額方式における引当金の取扱いも含め、実務の取扱いを踏まえて検討

これに対して、日本商工会議所(以下「日商」という)は、5つ目の観点として「円滑な事業承継に資する評価」を加えるべきであると主張しています。
さらに、国税庁は『客観的な「時価」としての評価の話と、税負担の在り方の話は分けて議論をするのが生産的』(第1回議事要旨)との立場で、有識者会議では評価問題だけを議論しようとしていますが、日商は「円滑な事業承継の促進には評価と税制措置の両面からの支援が必要不可欠であり、一方的に評価方法のみを議論することには断固反対」(第3回提出資料)との立場をとっており、議論すべき範囲についての考え方が異なっています。
日本税理士連合会(以下「日税連」という)も、『株価評価と事業承継税制は実務上深く関連するため、別々ではなくそれぞれの趣旨を踏まえた「一体での議論」が不可欠』(第3回提出資料)との立場を取っています。
この一体的な議論をすべきであるという考え方は、経済同友会による「非上場株式の相続税評価見直しに関する意見」など、関係する諸団体からも同趣旨の発言が行われています。

. 有識者会議における議論
国税庁は、今回の見直しは評価の適正化を図ることが目的で増収を目指すものではなく、現行の評価方法が租税回避スキームの温床となっていることから評価体系全体を見直す必要があるとの考え方を示しました。
4回は、今までの議論を踏まえ、国税庁は意見を伺いたい事項として以下の6項目を挙げました。

①学術的研究やM&Aの評価方法も参考に、抜本的見直しも視野に検討することについて
②評価方式の一本化を検討することについて
③会社法における訴訟やM&A実務でも用いられなくなった類似業種比準方式の今後の在り方について
④純資産価額方式を基本的評価方式として維持せず、特定の評価会社の評価方式として存置することについて
⑤配当還元方式について、還元率・計算方法に加え対象株主の範囲や従業員持株会との関係を整理することについて
⑥特定の評価会社の範囲と評価方法、少なくとも資産管理会社を純資産価額方式で評価することについて

検討項目が多岐にわたったことに加え、現行の評価方法に関する委員間の考えの相違が明らかになったことから、各委員が意見を述べたに留まり、各項目について議論を尽くすには時間不足でした。

. 今後の進め方・有識者会議の位置づけ
国税庁は具体的な評価方法のたたき台を提示し、それを基に議論を本格化させることとなりました。
税負担への影響は評価方法が固まった段階でシミュレーションを行う考え方が示され、また、次回提示するモデルについては、純資産価額は下限とは考えていない旨の発言が国税庁からありました。

4. 今後のスケジュールと影響
有識者会議は2026年秋頃に議論を取りまとめ、令和9年度(2027年度)税制改正大綱への反映を目指しています。
その後、パブリックコメントなどの手続きを経て、早ければ令和10年(2028年)11日から新たな評価ルールが適用される見通しです。
国税庁は「増税を目的としたものではなく、評価の適正化と租税回避スキームの排除が目的」と説明していますが、多くの黒字企業や資産保有会社において株価が上昇する可能性が懸念されます。
今後の動向を注視し、当社のようなコンサル型税理士へ早めの事業承継・相続対策のシミュレーションを行うことが重要です

 

5分で学べる税務知識 ・・・「地震保険のよくある誤解ポイント」

 

東日本大震災の発生から15年が経過し、災害への備えを見直す機会が増えています。
しかし、地震保険については十分に理解されているとは言い難く、誤解されたままになっているケースも少なくありません。
ここでは、よくある誤解をもとに、改めてポイントを整理します。

「火災保険に入っているから、地震も大丈夫」
火災保険は、火災だけでなく風災や水災など幅広い災害に対応していますが、地震・津波・噴火による損害は補償の対象外です
地震によって発生した火災による損害も対象外となるため、「火事だから火災保険が使えると思った」「保険に入っていたのに使えなかった」と感じるケースも少なくありません。

「地震保険に入っていれば、修理費は全額出る」
地震保険は、実際の修理費用をそのまま補償する仕組みではなく、生活再建を目的とした定額払いの保険です。
損害の程度に応じて「全損・大半損・小半損・一部損」に区分され、それに応じた割合の保険金が支払われます。
例えば、建物の修理費用が1000万円かかる被害であっても、「小半損」と認定された場合、支払われる保険金は契約金額の一定割合(一般的には30%程度)にとどまります。
そのため、実際の修理費用と受け取れる保険金との間に差が生じるケースも少なくありません。

「火災保険に入っていれば、とりあえず安心」
コスト面から地震保険を外すケースもありますが、日本では地震の発生時期や規模を予測することは困難です。
ひとたび被災すれば、建物や家財への影響は決して小さくありません。屋根瓦の落下や壁の亀裂、テレビが倒れて壊れた、さらには火災の発生など、これらの原因が地震であれば火災保険では対応できません。
地震保険は火災保険とセットで加入する仕組みであり、保険金額も火災保険の3050%の範囲内で設定されます。地震保険だけで再建費用のすべてをまかなうことは難しいものの、加入の有無によって被災後の経済的負担は大きく変わります。
未加入の場合、修繕費用を自己資金等で賄う必要があり、住宅ローンだけが残るといった状況も起こり得ます。
地震はいつ起こるか分かりません。だからこそ、預貯金や住宅ローンの状況も踏まえながら、火災保険との違いを含めて一度確認しておくことが重要です。

 

コーヒーブレイク ・・・「人生100年時代の「年金繰下げ」でこんなはずじゃなかった!注意」

 

老後に欠かせない「年金」。
もらえるのは原則65歳からですが、年金だけでは老後は厳しいというお声が少なくありません。
また、60代といってもお元気でご活躍される方も多く、まだ給与があるから年金は繰り下げようかというご相談も多くいただきます。
繰り下げすれば年金を増やすこともできますが、その一方で、もらえると思っていた年金が、実はもらえなくなったということも
そこで、今回は年金の「繰下げ」について見ていきます。

「繰下げ」とは
そもそも「繰下げ」とは、老齢年金のもらい方の一つで、65歳よりも後にもらう制度です。
実際には66歳から最長75歳までの間で繰り下げることができ、その期間に応じて年金が増額されます
ただし、昭和2741日以前生まれの方(または平成29331日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方)は、最長で70歳までになります。
なお、64歳までの特別支給の老齢厚生年金には「繰下げ」はありません。
待っていても年金は増えず、5年の時効が過ぎるともらえないことがあります。
早めの手続をお忘れなく。

老齢年金のもらい方は3つから選択
老齢年金は原則65歳から生きている間ずっともらえる終身年金ですが、実際にいつからもらうかは、次の3つの方法から自分で選択します。
「繰下げ」は②の方法です。
65歳からもらう(原則)
②後でもらう(繰下げ):66歳~最長75歳までの間に請求
③先にもらう(繰上げ):60歳~64歳までの間に請求
原則は①の65歳からです。
これを基準として、後にもらうと年金は増え(②繰下げ)、先にもらうと減ります(③繰上げ)。

「繰下げ」すると、どれくらい年金は増える?
「繰下げ」すると1月当たり0.7%年金が増え、その増えた年金を一生もらうことになります
仮に65歳でもらう年金が年100万円とすると、66歳からなら108.4万円(+8.4%)、70歳からなら142万円(+42%)、75歳からなら184万円(+84%)となります。
このように、繰り下げた期間に応じて年金が増え、増額率が決まりますが、この増額率は一生変わりません。

繰下げ増額率=0.7% × 65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数分(最大84%)

「繰下げ」にはリスクもある
「繰下げ」をした場合には、本来65歳からもらえる年金額を受け取れません。
その分を回収するには、繰下げ受給をスタートしてから約12年以上長生きすることが必要です
仮に、70歳で受給をスタートした場合には、82歳よりも長生きすれば繰下げしなかったよりも得することになります。
寿命のことだけでなく、健康状態によっては、必ずしも「繰下げ」がよいとは限らない場合があります

「繰下げ」しても、ホントにお金は足りる?
年金が思ったより少なくて困ったという場合でも、繰下げすれば増やすことが可能です。
繰下げした場合、65歳から繰下げ請求までの期間は「繰下げ待機期間」となり年金はもらえません
もらえるのは繰下げ請求した月の翌月分からとなります。
つまり、65歳から繰下げまでの期間は、年金の空白期間になりますので、その間の資金が足りるのかどうかのチェックが欠かせません。
必ず事前にキャッシュフロー表などで見える化されることをおすすめします。
「繰下げ」の途中で、万一、病気や介護等でどうしてもまとまった資金が必要だという場合には、65歳の金額を一時金で受け取ることもできます。
この場合、「繰下げ」の効果はなくなり年金は増えませんが、いざといときの保険になります。

老齢基礎年金・老齢厚生年金はどちらも、繰下げできる
「繰下げ」は、老齢基礎年金・老齢厚生年金の両方、あるいはいずれかのみでも可能です。
ただし、どれを選ぶのがよいかは、家族状況や配偶者を含めた年金の加入状況、給与などによって異なります。早めに年金事務所で試算されるとよいでしょう。


出典:日本年金機構

「繰下げ」しても、年金すべてが増えるわけではない
繰下げしても、年金の全部が増えるわけではありません。
増えない部分について、おさえておきましょう。

《繰下げしても増えない部分》
老齢厚生年金の「加給年金額」や老齢基礎年金の「振替加算額」
在職老齢年金による支給停止分(65歳以後も厚生年金に加入する場合や、70歳以後に厚生年金の加入する勤務先で働く場合)


出典:日本年金機構

「繰下げ」で気をつけたい落とし穴
「繰下げ」をすれば年金が増えるといっても、よいことばかりではありません。
特に、次のような点に注意しましょう。

《繰下げで気をつけたい落とし穴》
加給年金や振替加算がもらえない

繰下げ待機中に、年金をまったくもらっていない場合には、老齢厚生年金の加給年金額や老齢基礎年金の振替加算額を受け取ることができません。
特に、振替加算をもらえず、かえって損をしたということも少なくありません。
振替加算はいわゆる年金の家族手当です。
対象になる配偶者やお子様がいらっしゃる場合には、繰り下げするよりも受け取る年金が多くなる場合があります。
必ず、年金事務所やねんきんダイヤルなどで確認しましょう。

・厚生年金基金等とあわせて繰下げ
厚生年金基金または企業年金連合会(基金等)から年金を受け取っている場合に老齢厚生年金の繰下げを希望するときは、基金等の年金もあわせて繰下げとなります。
必ず、年金の支払元である基金等に確認しましょう。

・同時に繰下げしないといけないことも
共済組合等からも老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取ることができる場合は、すべての老齢厚生年金について、同時に繰下げ受給の請求をしなくてはなりません。

・障害給付等を受ける権利があるとき
65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害給付や遺族給付を受け取る権利があるときは、繰下げできません。
ただし、「障害基礎年金」のみ受け取る権利がある場合、老齢厚生年金の繰下げできます。

・他の年金の受給権を得た場合
66歳以後、繰下げ待機期間中に遺族年金など他の公的年金の受給権を得た場合には、その時点で増額率が固定されるため、たとえ年金の請求手続を遅らせても増額率は増えません。

・もしも、繰下げ中に亡くなったら
繰下げ待機中に亡くなられた場合、ご家族が代わりに繰下げ請求を行うことはできません
つまり、繰下げで年金が増えることはありません。
ご家族が、亡くなられた方の未支給年金を受ける場合、その年金額は65歳時点で決定され、過去分の年金額が一括で支払われます。
ただし、請求時点から5年以上前の年金は時効により受け取ることができません
なお、未支給年金は、相続税ではなく、受け取ったご家族の一時所得として課税されます
5年分一括の金額になるので、通常、確定申告が必要になることが予想されます。

「繰下げ」は、医療保険や税金にも関係する
「繰下げ」は年金額が増えるため、税金だけでなく、年金生活者支援給付金、医療保険・介護保険等の自己負担や保険料などに影響する場合があります。
年金が増えても、増えた分税や社会保険料の負担が増え、手取額が少なくなる場合もありえます。
公的年金以外の企業年金や給与、個人年金や保険の満期金などの収入の予測を把握し、ざっくり手取りがどれくらいになるのか確認しておくことをおすすめします。

こんなはずじゃなかった、という前に
「繰下げ」は、制度を上手に活用することで年金が増える効果は期待できますが、注意しないと思わぬ落とし穴に陥ることもありえます。
それを防ぐには、思い込みをせずに、正しい情報を知ることが不可欠です。
必ず事前に確認し、試算を行い、ご家族で話をされることをおすすめいたします。

 

事務所からのお知らせ

 

LINEで「金森勝税理士事務所」を開設しました。
参考になる情報を発信しますので、皆様の登録をお待ちしております。
友だち追加

また、金森勝先生のLINEスタンプも作成しました。
興味がある方は下記リンクから確認及び購入ができます。
https://store.line.me/stickershop/product/22281074/ja

「税金119番」のホームページを開設しました。
https://www.e-tax-group.com/tax119/
税務調査のプロが救命いたします。

金森先生が共著で出版した本(出版社:ぎょうせい)
「税目別誤りやすい税務への対応Q&A(第2版) 」法人税の対応を担当しました。

20268月の動き

 

スイス